精索静脈瘤の手術から妊娠・出産までの1年間の記録

5年間の不妊の末、2016年2月に精索静脈瘤の手術、4月に自然妊娠、12月に子供を授かる事が出来た1年間の記録です。精索静脈瘤について調べた時、多くの先人達のブログに学び、励まされました。その先人達のように私も、今悩んでいる人たちに対して少しでも役立てればと思いブログを書きました。

精索静脈瘤の手術から妊娠・出産までの1年間の記録

経緯 妻が通っていた不妊専門病院にて

私31歳、妻31歳、結婚7年目で不妊5年目。人工授精はまだ行なっていません。タイミング、卵管造影など行ないましたが妊娠できませんでした。

 妻が通っていた不妊の病院で、妻には問題がないとの事が分かりました。私の精子はフーナーチェックなどで「問題なくはないが、自然妊娠の可能性は多少ある」という微妙なライン。何回かタイミングを取ってもダメ、排卵誘発剤でもダメ…。いよいよ人工授精へステップアップです。

  • 人工授精1回目→精子の濃度に問題あり。人工授精を中止
  • 人工授精2回目→同様に精子に問題あり。再び人工授精を中止。

ちょっとおかしいなとのことで、泌尿器科を紹介される。

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泌尿器科にて男性不妊と診断

紹介された泌尿器科にて

  • 精液検査 2回(もちろん別の日に分けて)
  • エコー検査
  • 採血検査

を行い、精索静脈瘤のグレード2と診断される。

手術を検討してみても良いとのことで、手術可能な大学病院を紹介される。「精索静脈瘤」という言葉は生まれて初めて聞いたので、手術と聞いてかなり焦りました。

※一説によると精索静脈瘤」は男性不妊症患者の40%以上に認められるとか。。。

なお、ここで行なった2度の精液検査の結果を記しておきます。

                                         1回目 2回目 基準値

精液量(ml)         3.8      5.5     1.5
精液濃度(百万/ml)     12.0    4.3     15
精子数(百万)       45.6    23.7   39
精子運動率(%)       33.3    25.6   40
精子正常形態率(%)   4.5     3.9     4

基準値は検査結果の紙に書いてあるものをそのまま記載しました。精子数と精子運動率が基準値を大きく下回っている事が分かります。

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大学病院にて

泌尿器科で紹介された大学病院にてエコー検査を行なう。ここではグレード3と診断されました。大学病院に来る前から手術を決意していましたので、すぐに手術を依頼。

ちなみにこの大学病院では「顕微鏡下低位結紮術」のみ。保険が効かない1泊2日の手術です。何回も通院したくなかったので、その日のうちに手術前検診を行なう。
※手術日から逆算して、1ヶ月以内に行なわないとダメみたいです

 血液検査、レントゲン、心電図、さらには入院の手続き。この時点から保険が効かないのでその日のお会計は3万円強。事前に医者に言われていたがやはり高い…。

ちなみにスケジュールは月曜入院、火曜日手術&退院です。入院前の注意事項は体調管理程度とのこと。入院前日は医者に確認を取りお酒も飲みました。

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そしてついに入院当日

9:30までに入院手続きをしなければいけないので、朝早く起きて病院に向かいました。緊張であまり眠れませんでしたね…。

入院手続き→病室へ→血液&精液検査を経て、昼食は妻と病院内のレストランで済ませました。ちなみに病室は1日7500円です。(1泊2日=2日なので1万5000円。温泉宿並ですね…。)無料の所を希望したんですが空きがないとのことで有料部屋でした。残念。

その後は夕飯まで暇です。漫画を見たりラジオを聞いたりして過ごしました。

21:00以降は食べ物禁止手術当日の6:00以降は飲み物も禁止だそうです。

その夜は22:00頃に寝ようと目をつむりましたが全く眠れませんでした。枕が変わると眠れない体質ですが、それ以上に何か熱っぽいというかダルさが半端なかったです。高熱で手術中止!なんて事を心配して余計に眠れなかったんだと思います。

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いよいよ手術当日!

夜中から続いた熱っぽさは、病室の暑さと私の精神的なものでした。朝、熱を測ってみると平熱で一安心。あとは手術までじっくり待ちます。飲み物は6:00以降禁止ですから、早起きして多めに飲んでおきました。

私は1番目のオペ患者のようで、8:30手術開始とのことです。2番目、3番目の方がいたかどうかは知りませんがラッキーでした。

手術着に着替えて手術室まで徒歩で向かいます。同じ病棟に入院されていた方2名と一緒でしたが、制作静脈瘤の手術は私だけだと思います。

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いよいよ手術開始!

局部麻酔を打たれます。インフルエンザ予防接種のちょっと痛い版といった感じで、何だこんなもんかと拍子抜けしました。ところが・・・!

  • 医者「これ痛いですか?」(ツンツン、何かを刺している?)
  • 私「大丈夫ですよ」
  • 医者「では始めます・・・」(サクッ!)
  • 「いってぇぇ~!!!!」
  • 医者「あっ!ごめんなさい!」

…死ぬほど痛かったです。今まで経験した事なんてありませんが、完全に刃物でお腹を斬られる(ような)痛みでした。

その後は局部麻酔をさらに打ってもらい、なんとか進行していきます。結局最初の激痛に似た痛みが3~4回はあったと思います。そのたびに麻酔を強めてもらいました。

それと、金玉を強打した時の痛みの、もっと軽いバージョンが常時続いていました。医者曰く精巣を引っ張ってるから仕方ないとのことでしたが、気分の良い物ではありません。軽いけど、重~い痛みでした。

素人の私が寝ながら感じた大まかな流れとしては…

  1. 準備(手術台の設定や抗生剤の点滴など)
  2. 局部麻酔
  3. メス入れ(ここで激痛)
  4. よく分からないけど何かしてる(たまに痛い)
  5. 高価そうな顕微鏡登場。医者の雰囲気からここからが本番なんだと感じる
  6. 「これはリンパ・・・これは静脈・・」など顕微鏡で見ながら精査してる感じ。
  7. 精査したものを処理(たまに痛い&重い痛み)
  8. 傷口を針で塞ぐ(これも微妙に痛い)

で完了となりました。手術室に入ってからの準備が30分ほど、そして実際にメスを入れてからが1時間半ほどで終了しました。平均より少し時間がかかったようです。

意識があるというのは逆に大変だなぁと思いました。激痛が走った「3」からの1時間半ほどは生きてる心地がしませんでした。常に歯を食いしばって、いつ激痛が来てもいい準備をしていましたから…。

医者曰く、ひとまず成功したようで何よりです。

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手術直後

8時30分に病棟を出発して、戻ってきたのは11時を過ぎていました。「手術は1時間~1時間半」と聞かされていた妻は相当心配だったようです。確かに手術時間(医者の「さぁ始めます!」という掛け声でメスを入れてから)はそのくらいですが、準備や移動などの時間を考慮して欲しいですね。

術後は1時間は絶対安静です。その間「食事制限はありません」と医者は言っていましたが、病棟の看護師は「もちろん飲み物もダメ、トイレ行きたければ尿瓶で!」と話の食い違いがありました。長年の経験がある医者の見立てと、良い意味での教科書通りの看護師といったイメージです。1時間くらいですので私は安全そうな方、つまり看護師に従いました。

絶対安静の時間が終わって麻酔が切れてきたのか、傷口が痛み出しました。絶対我慢できないレベルではありませんが、結構痛いです。そこで看護師に座薬を入れてもらいました。看護師曰く、精索静脈瘤の手術をした患者は「座薬入れる」と言うと「(恥ずかしいから)じゃあ結構です」という方が多いとか。つまり大多数の人が我慢できる痛みという事でしょうが、私は帰りの電車の事もあるのでお願いしました。運転手付きのマイカーであれば私も我慢したかな…?と今になれば思います。

座薬を入れた後は痛みは引きました。ただ、術後は歩行が困難です。困難というか、傷口が開かないかビビりながら歩くので、非常にスローになってしまいます。痛みも多少あります。

昼食を食べて(食欲は全然ありました)、点滴を外してもらい、帰る準備をします。私服に着替える際、特にズボンとスニーカーを履くときに少し抵抗がありました。体が思うように動かない気がしたからです。ただ、座薬が効いているのでそこまで問題はありませんでした。

ちなみに、帰りは楽な格好が良いと思います。(特に下半身)ジーンズやチノパンではなく、ベルト不要のジャージやスウェットパンツが良いです。スキニーパンツなんて論外ですw

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退院

病院のシステム上、会計は後日ですので、帰りの準備ができたらそのまま帰ります。病院から駅まで徒歩10分、タクシーに乗ろうかとも思いましたが、座薬のおかげで痛みも少ないので歩きました。(医者曰く、自転車で帰ろうとした人もいたとか。さすがに止めたそうですw)

ただ、やはり歩くと痛みが徐々に出てきます。「座薬の効果よもってくれ!」と祈りつつ、1時間弱の電車に揺られます。最寄り駅から自宅までが徒歩15分くらいですので、さすがにここではタクシーに乗りました。

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我が家に到着!

1泊しかしてないですが、さすがに我が家は良いです。あの激痛から半日も経ってないのに、自宅にいることが不思議でなりませんでした。

夕飯の前にシャワーを浴びます。病院のホームページには「シャワーは術後翌日から」となっていましたが医者が今日から大丈夫とのことで、迷うことなく入ります。患部に水が当たらないよう、妻に手の傘を作ってもらいましたwあまり意味は無さそうですが、気分的にそのようにしました。

ここで気になったのは、手術した左側睾丸の微妙な腫れと黒ずみ。本来私は左睾丸が小さく、右睾丸が大きいんですが、術後は同じかあるいは左の方が大きくなってます。なんか異様なので少し心配です…。

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夕飯時に痛みが・・!

食欲はあるので普通に夕飯は食べましたが、食事中に痛みが戻ってきました。座薬の効果が切れたのでしょう。人によっては我慢できる痛みだと思いますが、私は処方されたロキソニンを飲みました。あまり効いてる感じがしませんでしたが、その後は普通に寝る事が出来ました。

入院前、入院中の2日分の寝不足のせいか、ぐっすり眠れました。痛みは多少ありましたが、こんなにぐっすり眠れたのは久々です。

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退院から1日目

医者はこの日から働いて良いと言っていましたが、私は念のため事前に有休を取りました。確かに無理をすれば通勤も勤務も出来たでしょうが、痛みで集中は出来なかったと思います。(ちなみに仕事は内勤で1日中座ってる仕事です)

この日、朝は処方された抗生剤(朝食後3日分)、朝と夜にロキソニンを飲みました。夜のロキソニンは不要だったかなと思いましたが、寝れなかったら嫌なので一応飲みました。座ってても体勢を変えたりすると痛いです。楽な姿勢を探すのに苦労しました…。とは言え映画×2本&ゲームをしてのん気に過ごしました。

ちなみにこの日、試しに自慰行為を行なってみましたw。「勃起しない!」とか「精液がでない!」なんて事になったら嫌なので、早目にしようと前々から決めておりました。ちょっと痛いですが、軽め軽めに行ないましたw

結果、普通に勃起して精液は出ました。普段より明らかに濃い気がしましたが、こんなに早く効果はでないですよね?w

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退院から2日目 いよいよ出勤!

自宅から最寄り駅まで徒歩15分です。歩くほうが痛くないか、いつものように自転車の方が痛くないか迷いましたが自転車にチャレンジ。結果、小さな痛みはありますが乗れないことはありません。歩いたほうが辛かったと思います。(さすがに段差は痛いです。要注意!)

この日は抗生剤のみでロキソニンは飲みませんでした。それだけ痛みがおさまってきた証拠でしょう。

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夜、テープをはがす

この日は仕事に行くという以上の試練があります。術後48時間を経過しているので、傷口のテープを剥がさなければいけないのです。シャワーを浴びながらゆっくり剥がします。めちゃ怖いです。傷口が塞がってなかったらどうしよう…、激痛が走ったらどうしよう…とビクビクしながら剥がしましたが、案外あっさり剥がせました。傷口はみみず腫れのようになっていますが、意外と綺麗です。

昨晩感じた睾丸の腫れに関しては、明らかに小さくなっていました。(もちろんまだ気になるレベルですが…)そのうち正常に戻るのでしょうか…?

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退院から3日目 経過観察で病院へ

この日もロキソニンは飲まず、最後の抗生剤を飲んで病院へ出かけます。術後の経過観察です。病院では傷口を確認してもらいました。気にしていた睾丸の腫れや黒ずみは「術後よくある。むくんでいるだけ」と医者は言っていました。一安心です。

エコー検査は行ないませんでした。今やっても意味がないとのこと。エコー検査と精液検査は3月後半頃、紹介元の泌尿器科で行なうようにとの指示がありました。そして、その結果を4月頭に大学病院に持って来てくれとのこと。二度手間のように感じられますが、どうせ大学病院では精液検査の結果は1日で出ないでしょうから私としては自宅から近い泌尿器科の方が助かります。

この日は会社に行っただけの前日よりも歩いたせいか、多少痛みました。もちろん我慢できる痛みです。このくらいなら全然寝れます。

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手術から1週間が経過

たまにズキズキorヒリヒリした痛みがありますが、日常生活ではほぼ気にならなくなりました。もちろん傷を触ると少し痛いです。病院のHPに書いてあった「飲酒と風呂は10日後から」というのを守るつもりですが、1週間でどちらも問題無さそうに感じます。

ちなみに傷口の腫れや睾丸の腫れもほぼ無くなりました。あとは肝心の精子ですね!検査を待ってまたお知らせします!

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手術から2ヶ月経過、運命の精液検査へ

手術から2ヶ月ちょっとが経ちましたので、精液検査を行いました。結論としては検査結果は悪く、どの数値も向上が見られませんでした。精液の見た目は濃くなっていたので、非常に残念です。

医師曰く、すぐに数値が向上する患者さんもいれば、半年後に向上する患者さんもいるとのこと。個人差があるのでそこまで気にする必要なしと慰められました。

なお、精液検査の結果を記しておきます。【】で囲ったのが手術後に当たる今回の検査結果です。手術前に行なった2回の検査結果と比べると、手術前の方が良い数値が出ている項目もあります…(悲)

                                  1回目   2回目 術後    基準値

精液量(ml)       3.8       5.5   【3.6】   1.5
精液濃度(百万/ml)  12.0     4.3 【9.5】   15
精子数(百万)  45.6    23.7  【34.2】 39
精子運動率(%)     33.3    25.6  【31.6】   40
精子正常形態率(%)4.5       3.9    【4.8】    4
※基準値は検査結果の紙に書いてあるものをそのまま記載しました。次の検査は7月に行なう予定です

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まさかの妊娠!!!

なななんと、4月の後半に嫁が妊娠している事が発覚しました。2月初旬に手術、4月の中旬に子作りしてましたから、手術からおよそ2ヶ月強で結果が出た事になります。前述の通り検査結果は良くなかったので、検査日がたまたま悪かったのか、あるいは逆で、子作りした日がたまたま良かったのかは知りませんが、とにかく感無量です!

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梅雨の時期は傷口が痛くなる?

妻のお腹の子供は順調に育っていますが、梅雨に入ると傷口が傷むことが多くなりました。それまでもたまにヒリヒリする痛みはありましたが、今回は重い痛みがありました。我慢できない程ではないのですが、かなり気になるレベルです。氷で冷やしたら多少は楽になりました。

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手術代と保険に関して

手術代や入院費などに関して触れていませんでしたのでここで公開します。参考程度にお考えください。手術前検診+入院代+手術代+術後検診すべて合わせておよそ…26万円でした。

で、私が加入している生命保険から10万円、埼玉県民共済から6万6000円出ました。(「精索静脈瘤の手術」と話しても、保険会社は「なにそれ?」でしたので保険が降りるまで心配でした)

健康保険適用外の手術でしたので高額療養費制度は使えませんでした。(保健所に問い合わせた所やはりダメでした)すなわち今回の手術は実質10万円弱で行なった事になります。参考にしてみてください。

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その後の傷口の経過

傷口はモリッとしていますが、陰毛で目立つ事はありません。ただ、季節の変わり目はやはり少し痛みます。痛むと言っても、日常生活に支障をきたすような痛みではありません。

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無事に女の子が生まれました!

12月24日、5年間の不妊の末に女の子が生まれました。ヘソの尾が腕に巻きついているとの事で緊急帝王切開になりましたが、母子共に健康です。

2月に手術、4月に妊娠、12月に出産と、これまでの長い不妊期間が嘘のようなあっという間の1年でした。

医師に言われましたが、手術をした人全員が子供を授かるかと言われれば決してそんな事はなく、私は単に幸運に恵まれたんだと思ってます。何かが一つ違えば私達夫婦は今でも不妊で、人工授精→体外受精とステップアップしていたかもしれません。

ただ、私の場合は精索静脈瘤の手術が妊娠に繋がったと認めざるを得ません。5年間何をやっても自然妊娠が出来ず、手術をした2ヵ月後に妊娠したわけですから、これ以外に要因は無いと考えています。

あくまで一つの成功例ですが、精索静脈瘤の手術を迷っている方に読んでいただき、何かを感じていただければ幸いです。長文乱文失礼致しました。